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調査研究・コラム

コラム

〈2026/03/02〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

絵本読み聞かせの発達全般への効果

神奈川大学 渡部かなえ
神奈川大学産官学連携研究事業

絵本の読み聞かせの子どもの発達への効果が、東北大学医学部小児科の先生たちによるエコチル調査データ(参考資料1)を解析した研究(参考資料2,3)で検証されました。エコチル調査とは、環境省が2010年から実施している子どもと健康と環境に関する全国調査で、約10万人が参加している大規模調査です。
データの分析結果から、保護者による読み聞かせの頻度が高いほど、3歳の時点で、コミュニケーション、粗大運動(走る、跳ぶ、ボールを投げるなど、体幹や手足の大きな筋肉を使う全身運動)、問題解決(身の回りの物や状況に対して、遊びを通して考え、工夫して対処する力)、個人-社会(自分の身の回りのことを自分でする力・他者と関わる社会的な力)の発達スコア(*)が高いことが分かりました。

      
図1継続的な読み聞かせが発達スコアに及ぼす効果(参考資料2)

 また、1歳の時点で発達スコアが基準値を下回っており、発達の遅れの可能性が疑われた子どもで、その後3年間、継続的に高い頻度で読み聞かせをしてもらった子どもは、読み聞かせの頻度が低かった子どもに比べて、3歳の時点での発達スコアが高くなっていました。

また、読み聞かせの頻度が高い家庭では、子どものスクリーンタイムだけでなく、親が子どもの近くでスマホを操作する時間も短いことが調査で明らかになりました。

絵本の読み聞かせは、子どもの言語能力はもちろんですが、それだけでなく、運動能力やセルフケア、社会性など、子どもの心身の発達の全般に良い影響があることが明らかになりました。また、親(大人)子の双方に悪影響が生じる長時間のスクリーンタイムを減らす効果があることも示唆されました。多くのご家庭で子どもへの絵本の読み聞かせをなさっていると思いますが、それが「時々やっている」のか「よくやっている」のかで、子どもの発達への効果は大きく異なります。また、家の外(公園や電車の中など)で、お子さんのそばでスマホをずっといじっているお父さん、お母さんの姿をよく見ますが、そういう保護者の方は、ご自宅でも子どものそばで同じようなことをしているのではないかと懸念されます。スマホからちょっと手を放して、絵本の読み聞かせを通して、お子さんと一緒に健やかな育ちにつながる豊かな時間を過ごしてください。

(*)エコチル調査のパイロット調査の成果から、ASQ-3の日本語版が作成され、日本の子どもたちのための発達診断の基準値が策定されました(参考資料4・5)。

【参考資料】
1.環境省, エコチル調査, https://www.env.go.jp/chemi/ceh/
2.東北大学, エコチル調査宮城ユニットセンター, プレスリリース, 絵本の読み聞かせが子どもの発達全般に好影響を与えることを解明-エコチル調査のビッグデータ解析より-, https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20260109_web04_Storybook.pdf
3.Haruhiko Nakamura, Tomohisa Suzuki, Keita Kanamori, Chiharu Ota, The Japan Environment and Children’s Study Group, Impact of shared storybook reading on child development: The Japan Environment and Children’s Study, Pediatric Research (2026), https://www.nature.com/articles/s41390-025-04721-7
4.環境省, エコチル調査から国民の行動変容等へつなげるために, https://www.env.go.jp/chemi/ceh/archive/shiryo/211215_m5.pdf
5.橋本圭司, 青木瑛佳, 目澤秀俊, 中山祥嗣, 日本語版ASQ-3(Ages & Stages Quesitonnaires, Third Edition in Japanese: J-ASQ-3), 医学書院, 2021.

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