コラム
〈2025/11/04〉
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
ハロウィーンと保育
神奈川大学 渡部かなえ
神奈川大学産官学連携研究事業
日本には年間を通して様々な行事があります。行事への参観は日常の保育とはまた別の学びの機会となるので、保育でも行事は大切にされています。
秋に園で行われる行事やそれに関連する活動(絵を描いたり、工作をしたりする造形や、歌を歌う等の表現)には、お月見や秋分、紅葉狩りや地域のお祭りなどの日本の伝統や文化、自然や風習に親しむもの、敬老のような年長者を尊敬しいたわる気持ちを育むもの、七五三のような子ども自身の成長を祝うもの、運動会のような健康な体づくりを目指すものがあります。どれも保護者や保育者が園児だった時はもちろん、当時の保護者や保育者(今の子どもたちにとっては、おじいちゃん・おばあちゃん世代)が園児だった時も既に保育活動として行われていましたが、近年、ハロウィーンが秋のメジャーなイベントになってきて、子どもたちも、魔女やおばけの格好をしてパーティに参加したり、「トリック・オア・トリート」と言ってお菓子を貰う機会を持つようになりました。
ハロウィーンは、古代ヨーロッパのケルト人の祭りが起源とされています。ケルトでは11月1日に新年が始まり、その前夜(10月31日)には、死後の世界から先祖の霊や悪魔、魔女などが来ると信じられていて、仮装することでそれらから身を守ることができると考えられていました。「トリック・オア・トリート」と言ってお菓子を貰う風習は、食料などを家の外に置いて、霊魂や悪霊だけでなく、妖精などの超自然的存在にささげる風習から発生したと考えられています(参考資料1)。ヨーロッパからの移民がアメリカにハロウィーンを持ち込み、アメリカでの楽しみ方をまねる形で1980年代に日本にも入ってきました。今年(2025年)のハロウィーンの経済効果は1250~1260億円規模になる見通しで、今やバレンタインデーを抜いて、クリスマスに次ぐ大きなお金が動くイベントになっています(参考資料2)。
その一方で若者や旅行者による迷惑行為が頻発し、渋谷などでは厳戒態勢を敷いたり、10月31日に人が集まらないよう広場や道路を一時封鎖しなければならない状況になっています。子どもたちには、日本の伝統や文化と同様に、海外から日本に入ってきた文化も、その背景や歴史をきちんと理解し、ルールを守り、他の人に迷惑をかけるような行為は慎んで、みんなが気持ちよく楽しく過ごせるようにすべきということを、ハロウィーンで仮装やお菓子を楽しみながら学んでほしいと思います。
【参考資料】
1.ナショナル・ジオグラフィック, ハロウィーンのトリビア:歴史とデータ, 2008年10月27日, https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/549/
2. 長野日報, 八面鏡, 2025年10月31日付
3. 弁護士JPニュース編集部, 渋谷ハロウィーン“自粛”から“共存”へ? 「路上飲酒禁止」条例施行から1年…「警備員125人・ハチ公封鎖・LUUP停止」対策の“現在地”, 2025年10月30日.