コラム
〈2025/10/01〉
顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)
自転車の後ろに子どもを乗せる時、大けがに注意
神奈川大学 渡部かなえ
神奈川大学産官学連携研究事業
子どもの保育園の送迎の際などに、自転車の後ろに子どもを乗せている保護者の方をよく見かけます。都市部の園では事故やトラブル防止のため自家用車での送迎はしないよう要請されていますし、買い物や通院など他の子どもを連れての外出の際も、目的地に駐車場が完備されていないことが多いので、自転車は子育て中の保護者の手軽なだけでなく重要な移動手段になっています。
しかし、自転車を漕いでいる保護者には後ろに座っている子どものことは見えないので、子どもの足が危険な状態にあっても気づきにくく、大けがに繋がってしまうことがあります。日本小児救急医学会は公式SNSで「自転車の後部座席の子どもが障害物(車どめやポール)と接触・衝突し、太ももの骨が折れる事故が増えています!」と注意喚起しています(参考資料1、図1)
図1:自転車の後部座席の子どもの大けが(脚の骨折)の危険性(参考資料1)
また、子どもの足が自転車の車輪に巻き込まれることで発生するスポーク外傷も多く発生しています(参考資料2、図2)。
図2:子どもの足が自転車の車輪に巻き込まれる様子・ダミー人形での実験(参考資料2)
2019年からの5年間で207件の自転車の後部に子どもを乗せていて起きた事故が報告されており、そのうちスポーク外傷が最多の約4割、脚などのはみ出しによるケガは2割です。スポーク外傷では擦り傷や捻挫が多いのですが、アキレス腱が切れたり、皮膚が大きく裂けてしまったりして縫合や植皮が必要になった事例もあります。はみ出しによるケガは骨折などの重傷が多く、大腿骨骨折のような治療にも回復にも長い時間がかかる深刻な状態になる危険が高いです(参考資料3、図3)。
図3:自転車後部座席の子どもの事故の原因とケガの内容(参考資料3)
自転車の後ろに子どもを乗せる時は、「子どもの足はフットレストに置き、外にはみ出さないようにする」「障害物がある狭い場所では、自転車から降りるかゆっくり通過する」ようにして(参考資料1)、子どもの足を怪我から守りましょう。また、自転車の荷台に子どもを直接座らせると、不安定なので、子どもの脚がぶらぶらしていたり足がスポークに巻き込まれたりしがちです。年齢や身長に合わせた幼児用座席を装着しましょう(参考資料3)。
【参考資料】
1.日本小児救急学会【公式】, https://x.com/jsepsns2024/status/1955237839819374952
2.独立行政法人 国民生活センター, 自転車に乗せた子どもの足が車輪に巻き込まれる事故に注意 ―いわゆる「スポーク外傷」が多発しています-, https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20160818_1.pdf
3.独立行政法人 国民生活センター, 自転車後部に同乗中の子どもの事故に注意-障害物と接触して大腿骨を骨折する事故も-, https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20240529_3.pdf