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調査研究・コラム

コラム

〈2025/09/01〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

チャイルドシート使用でシートベルトを子どもに適切・安全に装着

神奈川大学 渡部かなえ
神奈川大学産官学連携研究事業

 

シートベルトは乗車時の事故発生時に命を守るための安全装置ですが、正しい使い方をしなければ逆に致命傷を招く恐れがあります。子どもは大人以上にシートベルト損傷への注意が必要です。道路交通法でチャイルドシートやジュニアシート(ブースタークッション)など(以下、まとめて「チャイルドシート」と表記)の子ども用安全補助装置の使用が義務付けられているのは6歳未満までで(参考資料1)、6歳以上は義務ではないため、「6歳になったらシートベルトだけで大丈夫」と思われがちですが、チャイルドシートを使用せずにシートベルトを装着すると、ベルトが子どもの首やお腹にかかってしまい、衝突の際に首や内臓を損傷する危険があります(図1)。一般社団法人自動車連盟(JAF)や日本小児科学会は、身長150㎝未満をチャイルドシート使用の推奨の目安としていますが(参考資料2,3)、平均身長が150㎝を超えるのは中学生(12歳)以降で、小学生では6年生(11歳)でも半数は150㎝に達しておらず、6歳(平均身長:約116㎝)では、ほとんどの子どもがチャイルドシート使用の推奨対象です(参考資料4)。

図1:チャイルドシートの有無と子どものシートベルトの位置(JAF:参考資料1)

 

2024年8月、軽乗用車の後部座席に乗っていた7歳と5歳の子どもが交通事故で亡くなりました。二人ともシートベルトはしていましたがチャイルドシートは使っておらず、ベルトで腹部が圧迫され内蔵を損傷した可能性が指摘されています(参考資料5)。チャイルドシートを適切に使用しないと、子どもの死亡重症率は約2.4倍から5倍に跳ね上がります(図2)。
園児も卒園前にはほとんどの子が6歳になっていますが、チャイルドシートが不要になるのはまだまだ先です。お子さんを車に乗せる際は、子どもがもっと大きくなる(身長が150㎝を超える)までは、たとえ子どもが使用を嫌がっても、チャイルドシートとシートベルトの両方を正しく使って、子どもの命と安全を守ってください。


図2:乗車中のチャイルドシート・ジュニアシート使用有無別死亡重症率(2013~2022年) (参考資料6)

 

【参考資料】
1.警察庁, 子供を守るチャイルドシート, https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/childseat.html
2.JAF(日本自動車連盟), チャイルドシート完全ガイド いつまで必要? 取り付け方は?, https://jaf.or.jp/common/safety-drive/protect-life/child-seat
3.日本小児科学会, チャイルドシート着用義務にかかる道路交通法改正に関する陳情書, https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250521_chinjo.pdf
4.学校保健統計調査 年次統計, e-Stat(政府統計の総合窓口), 年齢別 平均身長・平均体重・平均座高の推移, https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003147022
5.朝日新聞 2024年9月10日, 「誤装着に注意を」、JAFが呼びかけ チャイルドシート、県内の使用率86.6%に増/福岡県
6.公益財団法人 交通事故総合分析センター, ITARDA INFORMATION No.145, 子どもを守るチャイルドシート ~正しい使い方について~, https://www.itarda.or.jp/contents/10152/info145.pdf

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