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調査研究・コラム

コラム

〈2025/05/08〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

学校給食

神奈川大学 渡部かなえ

神奈川大学産官学連携研究事業

 

保育所に通う子どもは毎日給食があり、幼稚園や認定こども園に通う子どもは、給食とお弁当あるいはお弁当だけ、など、通う施設によって様々ですが、小学校に入学すると、子どもたちはほぼ全員が昼食を学校給食で摂ります。1954年に学校給食法が成立して実施体制が整いましたが、この時の学校給食の目標は、戦後の食糧難によって悪化した子どもたちの栄養状態の改善で、「適切な栄養の摂取による健康の保持増進をはかること」でした。その後、日本は経済発展を遂げ、子どもたちを取り巻く職の環境も大きく変容して、2009年の学校給食法の改正で「食育」が学校給食の目的に加えられました(参考資料1)。食が細いあるいは偏食があるお子さんの保護者の方の中には、小学校での給食に不安を感じておられる方もいらっしゃると思います。

 

農林中央金庫が2005年から5~6年おきに行っている調査で、子どもたちが好きな給食メニューや給食の感想が報告されているので紹介します(参考資料2~5)。

 

給食で好きなメニューは、2005年から2022年までカレーが1位で、今も昔もカレーは子どもの好物なのが分かります。また揚げパンも2位か3位に常に入っていて、揚げて砂糖がまぶされているドーナッツ的なテイストが子どもに好まれるのでしょう。(表1)

 

表1:給食の好きなメニュー

  2005年 2011年 2016年 2022年
1位 カレー カレー カレー カレー
2位 ラーメン 揚げパン 揚げパン 揚げパン
3位 揚げパン キムチチャーハン 唐揚げ スープ

図1は給食の好きなメニューと嫌いなメニュー(2022年)で、カレーと揚げパン(1位・2位)が、3位以下を大きく引き離しています。けれど、揚げパンは「嫌いなメニュー」の4位のパン類にも入っています。この「嫌い」と回答した中に小麦アレルギーの子が含まれているかどうかは不明です。また「好き嫌い」と「味覚障害でパンが食べられない」子どもの区別は難しく、主食を(パンかご飯か)を子ども自身が選べるといいのですが(レストランで、ライスかパンかを選べるように)、そのような選択ができる学校はほとんどないようなので、「無理して食べなくてもいい」という認識を、子ども(クラスの他の子どもも含む)も教員も持つようにするのが、現状での妥当な対応方法かと思われます。

図2は給食の感想で、2005年には美味しいと回答した子どもは37.0%しかいなかったのですが、2011年には70%を超え、2022年には73.7%に達しました。食材や味付けなどに工夫がなされ、美味しい給食が提供されるようになっていると考えられます。美味しくなっていることに連動して給食が好きという回答も増えています。家で食べないメニューを食べることができる、という回答も微増しており、献立にも工夫がなされていることが分かります。

逆に2022年に激減したのが「みんなと一緒に食べると楽しい」という回答で、2020年から数年か続いたコロナ禍で給食でも黙食を指導・指示されて、「みんなで食べる楽しさ」を味わうことができなくなってしまったのでしょう。この点の改善が、今後の食育の大きな課題です。

 

保育所や幼稚園では、「食べることを楽しむ」ことが重要な保育内容に位置づけられていて、子どもたちは園や家庭で「食」を家族や先生、お友達みんなと美味しく楽しくいただき、心と体の健やかな育ちの糧にすることを経験し学んでいます。小学校では、幼児期に育んだその大切な根っこの上に、「生活科」「家庭科」「保健体育科」「社会科」「特別活動」などでの食育の学びを積み重ねます。食物アレルギーなどについては入学の際に学校側がきちんと把握して適切な対応ができるよう手筈が整えられていますが、子どもの食が細い、食べるのが遅い、味覚障害があるなどの不安をお持ちの場合も、入学前や入学時に小学校の先生に連絡・相談し、合理的な配慮をお願いしましょう。給食で嫌な思いをして学校が嫌いになってしまっては残念です。

 

 

【参考資料】

  1. 農林水産省, ふるさと給食自慢, 昭和から令和まで年代別にみる学校給食の変遷, 2020, https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2006/food01.html
  2. 農林中央金庫, ~東京近郊の小中学生400人に聞く~ 親から継ぐ『食』、育てる『食』, 2005, https://www.nochubank.or.jp/efforts/pdf/n_20050217092037.pdf
  3. 農林中央金庫, 【第2回】子どもの食生活の意識と実態調査, 「親から継ぐ『食』、育てる『食』」(第1回2005年2月調査)との比較レポート, 2011, https://www.nochubank.or.jp/efforts/pdf/research_2011_01.pdf
  4. 農林中央金庫, 【第3回】子どもの食生活の意識と実態調査, 2005年, 2011年との比較レポート, https://www.nochubank.or.jp/efforts/pdf/research_2016pdf
  5. 農林中央金庫, 【第4回】子どもの食生活の意識と実態調査. 第1回調査(2005年)・第2回調査(2011年)・第3回調査(2016年)との比較レポート, 2022, https://www.nochubank.or.jp/efforts/pdf/research_2022_01.pdf

 

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