〈2024/11/21〉
主席研究員 桜井智野風
基本的な動きについて その2 「跳ぶ」
「ピョンピョン」は脳や身体の試験運転
その場で「ピョンピョン」とジャンプを繰り返しているお子さんの姿をよく見るのではないでしょうか。このような活動は神経系がぐんぐんと発達している時期に、未完成段階の平衡感覚を自ら試している活動であるといわれています。つまり、身体をコントロールする神経の試験運転状態であり、たくさん行う必要があります。今回はこの「跳ぶ(ジャンプ)動作」の習得についてお話ししたいと思います。
一般的には多くの子どもは2歳前後でジャンプを出来るようになってきます。 前回お話しした「走る」という動作は歩く動作が速くなり身体が地面から浮くようになる動作です。つまり「走る」という動作は、片足ジャンプの連続ということになります。しかし、両足のジャンプ(その場跳び)となると新たに3つの課題が出てきます。1つ目は両足に同時にタイミングよく力を加える能力。脳からの命令が左右の脚にタイミングよく伝わり、それに反応して両脚の筋肉がシンクロして力を発揮することが求められます。脚だけではなく腕の振りも合わせるとすると、子どもたちの脳は活発に活動することになります。2つ目は筋肉に瞬間的に爆発的な力を発揮させる瞬発力です。「跳ぶ」ために使用する筋肉部位としては、ももの前面と後面の大腿筋(だいたいきん)とお尻の筋肉である大殿筋(だいでんきん)があります。この2つの大きな筋肉を速く大きく動かす動作は、小学校低学年でくらいから習得し始めます。そのための準備段階として、(速く大きくではなくても良いので)動き自体を覚えていくことが重要です。3つ目は着地に向けて脚をしなやかに前に出していく柔軟性です。この柔軟性というのは、柔軟体操やストレッチ運動を行っているときの身体の柔らかさとは少し異なります。身体をダイナミックに動かしている最中に、関節がスムーズに大きく動くことを指します。この着地は、子どもによっては恐怖心を伴うこともあります。この恐怖心は、身体のしなやかな動きを覚えて出来ることによって消えていきます。
園で行っている立ち幅跳び(その場跳び)には、これら3つの課題が含まれています。大人は「単なる立ち幅跳びでしょ・・・」と思われるかもしれません。しかし、子どもたちはこんなにも多くの課題を克服しながら、身体の使い方を覚えていくのです。お家に帰ってきて「ピョンピョン」と跳びはねているお子さんを見て、「静かに落ち着きなさい」ではなく、「脳や筋肉が様々なことを覚えようとして試験運転しているんだな・・・」と思っていただければと思います。もちろん、パパやママもこの試験運転を通ってきたわけですね。理解して温かく見守ってあげてください。