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調査研究・コラム

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〈2018/07/24〉

主任研究員 石毛賢

【保育士の専門性についての考察】第1回 保育士給与は安いのか

今回より、「保育士の専門性についての考察」というテーマで、コラムを執筆します。まずは初回ですので、当方のスタンス、これから連載していく内容などについて少し紹介していきたいと思います。

私の論調は、「保育士の処遇を改善し、憧れの職業という認識を、世間一般により浸透させたい」というスタンスで終始行っていきます。そのため、現状の保育の施策や保育士養成、保育現場での問題などを紹介・解説しながら、保育士の処遇改善の一助となることを目指していきます。

まず保育士の処遇を改善しようと思えば、最初に目に付くところは給与の面となるでしょう。「保育士の給与は安い」と日夜報道され、日本中誰でも、「保育士の給与は安い」と信じています。実際のところ、どうなのでしょうか。

2017年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)によれば、保育士の平均年収が約342万円であり、職種全体の平均年収が約450万円と、100万円以上の差があります。ただし、就労している方の平均年齢が保育士は35.8歳に対し、職種全体では平均42歳、また、平均勤続年数は、保育士は、7.7年に対し、職種全体では10年ということを考えますと、実際は、額面ほどの差があるとまでは言えないと考えられます。しかし、全職種からみて、「低い」ということには変わりありません。

また、現在、各自治体で、保育士の処遇改善の施策が行われています。具体的には、「保育士宿舎借り上げ支援事業」や「保育士処遇改善加算」などがあります。例えば、一人暮らしの保育士に関して言えば、「保育士宿舎借り上げ支援事業」を用いることで、家賃はほとんど掛からずに(数万円の自己負担はあるにしても)生活することが可能となります。家賃がほぼ掛からないわけですから、その分が手取り収入にプラスされることになります。そうなった場合、新卒の保育士の手取り収入は、同年代の平均収入を上回ることになるでしょう。

しかしながら、保育士という職業に関して、政府・行政の助成を受けることで一時的には給与面の改善がみられますが、それは処遇の根本的な解決にはならないのでしょう。

保育士の仕事は、子どもたちの未来に対し責任を持って取り組み、子どもたちの可能性を導くその基礎を築くことであり、教育の原点を担う崇高なものであります。その意味で、保育士とはその人の根幹を育成する職業と言えます。この重要性を世の中が認識した上で、保育士の専門性について理解が周知されれば、保育士という職業の重要性、保育士の価値というものが向上していくのではないかと思われます。だからこそ、キーワードはコラムのテーマである「保育士の専門性」にあるわけです。

次回は、保育士の専門性について、議論を深めていきたいと思います。引き続きよろしくお願い致します。

 

【執筆者プロフィール】
主任研究員 石毛賢
総合学園ヒューマンアカデミーチャイルドケアカレッジ主任講師

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