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調査研究・コラム

コラム

〈2024/03/01〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

震災後の子どもの心のケア

神奈川大学 渡部かなえ

神奈川大学産官学連携研究事業

 能登半島地震で、石川県だけでも241人の方が亡くなられ、1182人の方が重軽傷を負い、震災発生後1か月たっても自宅に戻れず避難生活を続けざるを得ない人が13518人もいらっしゃいました(資料1)。子どもたちの体だけでなく心への深刻な影響も懸念されます。

2011年の東日本大震災の翌年(2012年)に文部科学省が行った子どもの様子についての調査(資料2)によると「震災のことを思い出して突然おびえたり、興奮や混乱することがある」などのPTSDが疑われる症状(図1)が現れていました。その発症率は、幼稚園(文科省の調査なので、保育所の園児のデータは無く、幼稚園児のみ)20.2%、小学校17.6%、中学校11.5%、高等学校8.8%と、年齢が低いほど多くの子どもが発症していました(図2)。3歳以下の乳幼児もいる保育園児も勘案すると、幼い子どもたちへの影響は、実際にはもっと大きく深刻ではないかと思われます。

図1:子どもに観られるPTSDが疑われる症状(保護者回答) *参考資料2

図1:PTSDが疑われる症状が1つでもみられる子どもの割合(単位:%) *参考資料2

 PTSDは、子ども自身は気づくことができず、周囲の大人にもなかなか気づいてもらえないことがあり、長期にわたって生活に支障をきたして、成長にも深刻な影響を及ぼします。PTSDから子どもを救うには、専門機関での診断と治療、そして日常生活でも適切なケアが必要です。大人自身もいっぱいいっぱいで大変だと思いますが、保護者、保育者、地域の人たち、行政が連携して子どもたちを見守り続け、子どもの変化に気をつけてあげることが大切です。

【参考資料】

  1. 内閣府, 令和6年能登半島地震に係る被害状況等について, (令和6年2月8日、14:00現在), https://www.bousai.go.jp/updates/r60101notojishin/r60101notojishin/pdf/r60101notojishin_29.pdf
  2. 文部科学省, 平成24年度非常災害時の子どものケアに関する調査報告書, (平成25年7月), https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1337762.htm

 

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