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調査研究・コラム

コラム

〈2023/10/04〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

食物アレルギー

神奈川大学 渡部かなえ

神奈川大学産官学連携研究事業

 

食物アレルギーの児童生徒が増えていることが、日本学校保健学会による全国調査で明らかになりました。2022年度の調査では、小学校から高等学校までの子どもたちのうち52万6705人がアレルギーを持っており、その半数以上の27万354人は小学生です(資料1)。

図1:食物アレルギーの児童生徒 人数と割合(参考資料1,2,3より作成)

 

食物アレルギー有症率は幼い子ほど高く、就学前の乳幼児には食物アレルギーを持つ子どもが小学生よりもさらに大勢いますし、食物アレルギーがある乳幼児の9割はアトピー性皮膚炎も発症しています(資料4)。アトピー性皮膚炎の子どもは皮膚のバリア機能が弱いので、アレルギーの原因物質に触れると皮膚から体内に入ってしまい、とても強く激しいアレルギー反応を起こす危険があります。

 

食物アレルギーを持つ園児の保護者の方は、子どもの小学校入学後の給食での誤食(アレルギーを引き起こす食材を食べてしまうこと)を心配なさっていると思います。もちろん誤食は避けなければなりませんが、給食を食べること以外にも、食物アレルギーを引き起こす可能性があるものに(皮膚などが)触れてしまう機会が実は結構あります。例えば、友達がこぼしてした牛乳が飛び散って皮膚に触れてしまうことがあります。図工の教材として小麦粘土や牛乳パック、卵の殻が使われることもあります。また、給食で出された牛乳パックを洗って切って折りたたんでリサイクルに出せるようにする作業を当番制でやったりもします。調理実習の際、自分たちはアレルギーの原因となる食材を使わなくても、前のクラスで使っていて、調理道具に少しついたままになっていたり、調理台にこぼれたものが完全に拭き取られていなかったりする可能性もあります。また、節分を学校行事で行う際には大豆を撒いたりもしますし、体験学習でそば打ちや味噌づくりなどを行うこともあります。

 

園の年長さんは小学校入学まであと半年。乳幼児期には食物アレルギーが寛解する(アレルギー反応が起こらなくなる)こともありますが(資料5)、ある食材のアレルギーが寛解しても、別の食材に新たにアレルギーを起こすようになってしまうこともあります。また、アレルギーマーチで、乳幼児期にはなかった花粉症を発症することもあります。日本ではスギ花粉が花粉症の原因植物の場合が多いのですが、スギ花粉症の子どもはトマトにアレルギー反応を起こすことがあります。またブタクサの花粉症も増えてきていますが、ブタクサ花粉症の子どもはメロンやスイカなどの果物やキュウリやズッキーニなどの野菜にアレルギー反応を起こすことがあります(資料5)

 

食物アレルギーを持つお子さんの保護者の方は、子どもの状態の変化に注意して、学校には、給食を食べる際の注意はもちろんですが、先に例としてあげた授業中に使う教材やクラスでの活動で注意してほしいことを伝えましょう。また行事の際には、前もって保護者に内容を伝えてもらい、疑問や不安なことは遠慮なく学校に問い合わせましょう。

 

1クラスの人数が多く、先生の役割も「勉強を教えること」がメインで生活支援ではない学校では、(保護者がわざわざ言わなくても)きめ細やかな対応をしてくれる保育所や幼稚園とは状況が異なります。学校という集団生活の中で事故が起こらないよう、学校と密に連絡を取り、学校と協力して、アレルギーを持つ子どもの安全を守っていく必要があります。

 

【参考資料】

1)学校保健ポータルサイト, 令和4年度 アレルギー疾患に関する調査報告書,

https://www.gakkohoken.jp/books/archives/265

2)学校保健ポータルサイト, 平成25年度 学校生活における健康管理に関する調査事業報告書

https://www.gakkohoken.jp/books/archives/159

3)学校保健ポータルサイト, 平成16年度 アレルギー疾患に関する調査研究報告書

https://www.gakkohoken.jp/uploads/books/photos/v00057v4d80367f62adc.pdf

4)厚生労働省, 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン, 第4章 食物への対応, アレルギー

平成23年3月, https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku03.pdf

5)日本医師会, 健康プラザNo.477, 果物アレルギーと花粉症の関係

https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/477.pdf

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