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調査研究・コラム

コラム

〈2023/06/01〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

コロナと共働き夫婦の家事育児の時間の変化

神奈川大学 渡部かなえ

神奈川大学産官学連携研究事業

2020年度初頭に緊急事態宣言が発出された新型コロナウイルス感染症のパンデミックで、社会生活も個人の生活も深刻な影響を受け、大きく変化しました。子育てをしている夫婦では、コロナ前は共働きであっても家事や育児は妻(母親)圧倒的に多くの負担がかかっていました。コロナによる外出自粛やリモートワークの導入、子どもが通う学校園の臨時休校などのため、母親や子どもだけでなく夫(父親)の在宅時間も増えましたが、共働き夫婦の夫の家事や育児への関わり方は変わったのでしょうか。5年ごとの調査が行われている総務省の社会生活基本調査の、6歳以下の子どもがいる共働き夫婦(父親と母親)のコロナ前(2016年・平成28年:参考資料1)とコロナ禍(2021年・令和3年:参考資料2)の比較から検証してみます。

グラフは参考資料1と2のデータから作成したもので、1週間あたりの、「仕事」、「家事」、「育児」、「休養・くつろぎ・趣味・娯楽」に費やされた平均時間を示しています。

仕事の時間ですが、父親はコロナ禍で36時間減りましたが、母親は逆に26時間増えました。家事は、父親は4時間と微増し、母親は35時間も増えました。育児の時間は両親ともに減っており、父親は27時間、母親は103時間で、両親を合わせると130時間も減少しました。休養やくつろぎの時間は、父親は28時間増、母親は39時間増とかなり増えました。

家族が在宅している時間が長いと家事としてやることが増え、その負担のほとんどが母親にかかっていたことを調査結果は示しています。コロナ禍では保育所などの臨時休園や保護者の勤務がリモートワークや在宅ワークになったため、子どもたちの在宅時間時間も長くなったはずですが、育児の時間が大きく減少しているというのは、親も追い詰められたストレスの多い状況に置かれ、子どもと一緒に家にいる時間が長くなっても、子どもに関わる力は残っていなかったのかもしれません。特にコロナ前は長い時間を費やしていた母親の育ての時間がコロナ禍で激減したのは、お母さんが疲れ切ってしまったからかもしれません。心配です。コロナ禍に両親の休養やくつろぎの時間が増えたのは、心と体を休めないと壊れてしまうほど大人も疲れていたのでしょう。子どもたちも、園の臨時休園などで登園できず、外出制限で遊びに行かれず、親と一緒に家にいるのに関わってもらえる時間が大きく減ってしまうなど、コロナにいろいろなものを奪われました。

けれど、2023年年度になって、社会はコロナで受けたダメージからの回復を目指し進み始めました。コロナで失われた子どもたちの健やかな育ちに必要なものも、みんなで取り戻していきましょう。

 

【参考資料】

総務省統計局

1)総務省統計局 平成28年社会生活基本調査の結果 https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.html

2)総務省統計局 令和3年社会生活基本調査の結果 https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/kekka.html

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