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調査研究・コラム

コラム

〈2022/09/02〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

スマホを育児に利用することへの保護者の思い

神奈川大学 渡部かなえ

神奈川大学産官学連携研究事業

 スマートフォンは今や生活必需品のようになっており、育児にスマホを使うことについてもしばしばマスコミなどでも取り上げられ、「スマホ育児」という言葉もすっかり定着しています。スマホ育児には賛否両論、様々な意見がありますが、実際に子育てをしている保護者の方々はスマホ育児をどのように考えているのでしょうか?

私のゼミの男子学生2名がこの問題に関心を持って卒業研究のテーマに選び、神奈川大学と産学連携協定を結んでいるヒューマンスターチャイルド白楽ナーサリーと園児の保護者の皆様に協力していただいてアンケート調査を行いました。彼らの研究結果を紹介します。

 

アンケートに回答してくださった保護者のお子さん(3~6歳)の78%にスマートフォン使用経験がありました。また、使用経験があるお子さんの85%が3歳までにスマートフォンを使用し始めており、スマートフォン使用の低年齢化が進行していることが分かりました。

スマホを育児に使うことに保護者の75%が賛成、25%が反対で、子どものスマートフォン使用率と近似していました。賛成派の保護者のお子さんは使用しており、反対派の保護者のお子さんは使用していないことを反映していると思われます。賛成の保護者は「ルールがきちんと定まっていれば問題ない」「育児や家事負担の軽減」「子どもの興味関心を引き出せる」と考えており、反対派は「健康への悪影響や体験活動を阻害する」「そもそもスマホ育児自体に良いイメージがない」という意見を持っていることが分かりました。

民間の研究所の調査によると1~2歳に使用を開始する家庭が多いのですが(資料)、白楽ナーサリーの子どもたちのスマホ開始年齢は2~3歳が多く、やや遅めです。また白楽ナーサリーでは賛成派の保護者の97%が子どものスマホ利用のルールを決めており、決めていない保護者も「そもそも使用回数が少ないのでルールを決める必要がない」と回答していて、マスコミなどで言われているような「スマホに育児を丸投げ」のような状況とは異なり、保護者が子どものスマホ使用をきちんと見守りしつけをしています。

反対派の保護者からは、「視力やコミュニケーション能力の低下」、「スマホ依存になるのではないか」、「子どもの五感を養う体験活動が阻害されてしまう」といった発達・健康への悪影響を懸念する意見が多く聞かれました。また、「子どもの将来を考えると、スマートフォンやタブレットに順応していくことは重要なことだが、教えるのは今ではない」と、子どもがICT機器に慣れていくことは重要なことであると認識しつつも、あくまでも幼少期はそうしたものに縛られず、自分の感性を磨く体験活動を増やしてほしいという意見も見られました。

家庭でルールをきちんと決めれば、デメリットを最小限に抑え、有効活用することができます。使用時間帯などを制限できるアプリもあります。こうした情報をスマホ育児の具体的な方法として提案していく必要があると学生たちは結論付けました。

筆者自身はスマホを所持していません(そういうとビックリされるのですが)。パソコンは、無いと仕事ができないので使用していますが、多くの人がスマホに費やす時間を読書や執筆などにあてることができています。ですので今後も当面はスマホを所持するつもりはないのですが、学生たちを見ていると、スマホは生活のあらゆる場面でなくてはならないものになっています。「スマホを使わない」わけにはいかないのなら、スマホ依存や健康被害を防ぐための教育が必要ですし、スマホ使用の低年齢化が進んでいる以上、家庭でスマホのルールを決めることや幼児期からスマホ利用のルールを学ぶことが必須でしょう。

 

【出典】宮田輝一・田中蓮、スマホ育児と子供の成長、2021年度 神奈川大学 卒業研究

【参考資料】MMD研究所、乳幼児(0~6歳児)のスマートフォン利用の実態「子どもひとりで使用」が約半数、https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1544.html

 

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