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〈2021/10/04〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

保育士不足と離職

コロナ禍の影響で待機児童数は減っているように見えますが(前月:2021年8月の記事をお読みください)、保育士不足が解消されたわけではありません。

まず、保育士の現状を見てみます。保育士として働いている人の人数は、令和元年の社会福祉施設等調査によると400738名で、うち保育所等で働いている保育士は380094名です(資料1)。一方、各都道府県に登録されている保育士の数は令和2年4月1日時点で1665549名で(資料2)、約130万人が、保育士資格を有しているが保育士として働いていません。また、保育所で勤務する保育士の経験年数は、14年以上が最も多いのですが、次は2年未満で(表1:資料3)、勤めてすぐに離職してしまう人が多いことが分かります。

 

表1:保育所で勤務する保育士の経験年数(平成27年社会福祉施設等調査:厚生労働省) 単位:人

2年

未満

2~4年未満 4~6年未満 6~8年未満 8~10年
未満
10~12年
未満
12~14年
未満
14年

以上

不詳 総数
40390 34813 28998 24699 20725 17583 15243 78721 67524 328696

 

では、養成校での2年~4年の学びや受験勉強を経て国家試験を突破して、保育士という国家資格を取得し、保育の現場に専門職として就職しながら、なぜ短期間で離職してしまうのでしょうか。巷では「給料が安いから」ということがよく言われています。最新(令和2年)の賃金構造基本統計調査でも、月額給与額は全産業に比べ保育士に支払われる金額は6万円以上低く抑えられています。(表2:資料4)

 

表2:保育士の給与 (単位:千円)

月間給与額
保育士 245.8
全産業 307.7
(差額) ▲ 61.9

 

確かに、高い専門性が求められ、子どもの健康と安全を守るという重い責任を負っている職でありながら、それに見合った給与とは言い難いように思われます。しかし離職の理由の第1位は、実は給与が安いことではありません。最も多いのは「職場の人間関係」です。「給料が安い」は2番目の理由ではありますが、仕事量の多さや長時間労働も離職の理由です。(図1:資料5)

 

子どもたちが安心して笑顔で過ごせる保育所であるためには、保育士さん達も安心して笑顔で過ごせる環境整備が不可欠です。「やりがいのある仕事」というだけでは、熱意のある保育士ほど燃え尽きてしまいます。また、各施設の経営者や管理職に全ての対応の責任を負わせるのでは、経営者、管理職が疲弊してしまいます。幼児教育の無償化で保護者の負担軽減を図るだけでなく、産業医や産業カウンセラーの配置、給与の適正化や多くの保育士が現場で活躍できるよう、保育所と保育士への公的な支援(政府による運営交付金の配布)も必要でしょう。

図1:過去に保育士として就業したものが退職した理由

 

【資料】

1)厚生労働省, 令和元年社会福祉施設等調査の概況,

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/19/index.html

2)厚生労働省, 保育士登録者数等, https://www.mhlw.go.jp/content/000656131.pdf

3)厚生労働省, 保育士の現状と主な取り組み,

https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

4)厚生労働省, 令和2年賃金構造基本統計調査, (発表:2021年5月21日),

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html

5)東京都福祉保健局, 東京都保育士実態調査報告書(発表:令和元年5月)

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shikaku/30hoikushichousa.files/130mokujihyoshi.pdf

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