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調査研究・コラム

研究データ

〈2021/07/09〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

子どもの自殺 -コロナ禍で最多に

令和2年度、過去最多の500名近くの子どもたちが自ら命を絶ちました。下のグラフは、平成28年度~令和2年度の子ども(小学生・中学生・高校生)の月別の自殺者数です。赤色が令和2年度です(資料1)。なお、令和2年度の計479名は厚生労働省が暫定値として集計したもので、本論もそれに基づいて文部科学省が作成したグラフを用いて検証しますが、のちに発表された確定値は499名です。

令和2年度に自殺した子どもは前年比1.4倍で、学校種別では小学生が2.3倍の14名、中学生が1.4倍の136名、高校生が1.4倍の329名でした。
令和2年度の特徴は、例年に比べて人数が多いだけではなく、6月と8月に多くなっていることです。6月は前学期末に突然始まった一斉休校が明けた時で、8月は授業の遅れを取り戻すために短縮された夏休みが明けた時、すなわちコロナ禍での長期休校が明けた時期です。
原因・動機としては、学業不振(52名)や進路に関する悩み(55名)が依然として多かったのですが、心の病気の悩み・影響(73名)が前年比で大幅に増えていました。(資料2)社会や学校を混乱に陥れた新型コロナウイルス感染症やそれによる休校は、子どもたちに深刻な影響を及ぼしました。

学校にも子どもたちにも大きな負担をかけた一斉休講ですが、感染を防ぐ効果が本当にあったのか、文部科学省による検証や報告はなされていません。しかし、学校を休校にした自治体としていない自治体の人口当たりの感染者数を比較した研究によると、休校にしたところとしなかったところで感染者数に有意な差はみられず、どちらかというと休校にした方で感染者が多かった、という結果がでました(資料3)。

保育所は閉園にならなかったけれど、上のお子さんが学校に通っている保護者の方や、就学しているお子さんがいる保育士・幼稚園教諭のみなさまは、感染による健康不安だけでなく、一斉休講による子どもの学力、生活、そして心理面への不安も大きかったと思います。

文部科学省が開いた自殺予防に関する調査研究協力者会議では「GIGAスクール構想」を活用して、児童・生徒が一人1台ずつ情報端末を使って個別学習支援をすることが提言されたそうです。もちろん、情報端末を使った個別指導にも意義や効果はありますが、親や学校が望む解決策を子どもに押し付けるのではなく、子どもの話を聞き、子どもの心に寄り添う支援が必要ではないでしょうか。

【資料】
1) 日本教育新聞, 児童・生徒の自殺1.4倍に 男女差縮まる, 2021年2月22日

児童・生徒の自殺1・4倍に 男女差縮まる


2)朝日新聞, 子どもの心理ケア、急務、コロナ下、児童生徒の自殺最多, 2021年3月7日 朝刊
3)朝日新聞デジタル, 休校は感染を抑えたか 847自治体を分析した政治学者, 2121年6月17日,
https://www.asahi.com/articles/ASP6J51TNP6CULEI00B.html?ref=weekly_mail_top

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