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〈2021/04/30〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

ラン活で早まるランドセルの購入時期

「ラン活」とは、小学校入学を控えた子どものランドセル選びや購入するための活動を指します。4月の入学までに購入すればよいはずですが、この十数年間で購入時期はずいぶん早まっています。下図は総務省の最新の家計調査(資料1)による通学カバンの購入時期の変遷です。

図1:総務省の最新の家計調査(資料1)による通学カバンの購入時期の変遷

 

2007~2009年は年が明けて入学まで3か月くらいになってから購入する家庭が多かったのですが、2012~2014年は秋に購入する家庭が多くなり、直近の2017年~2019年は夏にはもう購入済みの家庭が多く、入学まで一年弱もある5月の購入も多くなっています。

 

2020年に始まった新型コロナウイルス感染症拡大は家計にも大きな影響を及ぼしました。総務省のデータには2020年のデータはないので、ランドセル工業会の調査報告(資料2)を見てみます。

 

以下の2つのグラフの、上は2019年度の、下は2020年度のランドセル購入時期です。2019年度は、総務省の2017~2019年の3年間の平均とほぼ同じ傾向を示しています。コロナ禍にあった2020年度は、夏前に購入した家庭がさらに増えており、購入時期が早まっているという傾向に変化はありませんでした。

 

図2:2019年度 ランドセルの購入時期

 

図3:2020年度 ランドセルの購入時期

 ランドセル購入時期の変遷の背景には、ランドセルメーカーや販売店が、祖父母が孫のために購入する需要を見込んで、孫がくる5月のゴールデンウィークや夏休みを狙って春ごろから販売を始めるようになったことがあります。以下の表はランドセル購入の際の支払者の割合ですが、祖父母が圧倒的に多くなっており、メーカー等の販売の販売戦略が「成功している」ことが分かります。ただし、2017~2019年度は祖父母の割合が6割を超えていますが、2020年度は5割に減っています。緊急事態宣言や外出自粛要請の影響でゴールデンウィークや夏休みに祖父母のところに行くのを控えた影響と思われます。

祖父母
2017年度 60% 36%
2018年度 61% 35%
2019年度 60% 35%
2020年度 53%

43%

表:ランドセル購入の際の支払者

実際に使う約1年も前にランドセルを購入する必要があるのでしょうか。夏を過ぎると買いたいランドセルがもう買えないというプレッシャーから「ラン活」が加速していますが、小学校入学以降の「勉強」のことを保護者が焦りすぎているように思われます。保育園や幼稚園の最後の1年、遊びを通していろいろなことを学ぶ大切な最後の1年を、保護者も子どももっと大事に楽しんで過ごしてほしいですし、ランドセルメーカー・販売店もランドセルの早期購買を煽ることなく、幼児期のかけがえのない日々を見守っていただきたいです。

 

【資料】

  • 総務省統計局, 家計簿からみたファミリーライフ, 4.変わる季節性, 2020年

https://www.stat.go.jp/data/kakei/family3/03.html#ch0304

  • ランドセル工業会, ランドセル購入に関する調査,

http://www.randoseru.gr.jp/graph/

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