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〈2020/12/14〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

【神奈川大学産官学連携研究事業】サンタクロースって本当にいるの?

1897年のアメリカの新聞 The New York Sunに、”Yes, Virginia, There is a Santa Claus “ (そうです、バージニア、サンタクロースはいます)という素敵なタイトルの社説が掲載されました。これは
8歳の女の子バージニアから新聞社に届いた「サンタクロースって本当にいるの?」という手紙に応える形でフランシス=P=チャーチ記者が書いたものです(1)。信じること、想像力の翼を広げることの大切さを、サンタクロースを通して語りかけたこの社説は、今でもクリスマス・シーズンになるとあちこちで引用され、絵本として出版もされ(2)、日本でも翻訳され出版されています(3)。

日本の保育所や幼稚園でも、特にキリスト教系の園でなくても、クリスマスを年間計画に位置づけているところは多く、子どもたちが楽しいひと時を過ごす行事として行われています。

幼児教育はキリスト教と深く結びついて誕生し、発展してきました。日本の幼児教育は明治期に欧米諸国から導入されており、そのルーツはドイツのフレーベル(Friedrich Wilhelm August Fröbel,1782-1852)にあります。幼児教育を実践する場所としての「園」の制度、歌や遊戯、絵画、教育玩具、生き物を育てること、生活体験などの保育内容や様々な行事は、彼の教育論から来ています(4)。
クリスマスも重要な行事として位置付けられています。キリストの生誕を祝うだけでなく、幼児期から「信じる心」を育てること、クリスマスという行事に伴う「喜び」「幸福」「感謝」の気持ちを味わい感じ取ることが大切であるとされています。保護者や保育者、友達と協力して準備をすることを通して期待感を持ち、プレゼントを通して感謝する心や貰うことだけでなく分け与えることの喜びを知り、食を共にすることで、皆の幸福と健康を願い、そして食を分かち合うことの喜びを学びます。

クリスマスを、単にねだったものを「プレゼント」という形で自分だけが手に入れて、美味しいものを食べるだけの日にしてしまっては、あまりに勿体ないです。また園でも、飾りつけ等の準備は保育士さんや幼稚園の先生など大人がやって子どもは見るだけ、あるいはクリスマスソングを歌って、いつもとちょっと違うクリスマスっぽいおやつを各自が食べておしまい、では残念です。折り紙や工作でプレゼントをつくってお友達同士で交換する、クリスマスカードをつくって(画一的なモノではなく、子ども一人一人が自由にデザインし、絵を描き、折り紙や綿、布などを貼り付けるなど自由に創作する)お父さん・お母さんにプレゼントするなど、ぜひ、クリスマスを子どもの心の育ちの糧となる大切な行事として、保護者も保育者も子どもたちと一緒に楽しんで過ごせたら、とても素敵だと思います。

【参考資料】
(1) Yes, Virginia, There is a Santa Claus, https://www.newseum.org/exhibits/online/yes-virginia/
(2) Yes, Virginia, There is a Santa Claus, Francis P. Church, Illustrated by Joel Spector, Running Press Classics, Philadelphia, 2001.
(3) サンタクロースっているんでしょうか? 訳:中村妙子、絵:東逸子、偕成社、2005年.
(4) フレーベル全集, 全5巻 玉川大学出版部 1977-1981年.

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