お問い合わせ

調査研究・コラム

研究データ

〈2019/11/15〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

【神奈川大学産官学連携研究事業】第18回 スウェーデンと日本の幼児教育カリキュラムの比較

幼児教育には、子どもたちが幸せな人生を送り、より良い社会をつくっていくことができる人になるために、このような力をつけて育ってほしいという願いが込められており、幼児教育カリキュラムには、その国の文化や価値観(何を大切と考えるか)が反映されています。前回は、スウェーデンの幼児教育カリキュラム(Lpfö18)1)のコンセプトを紹介しました。
今回は、スウェーデンと日本の幼稚園教育要領(*注)との比較を通して日本の幼児教育を考えます。

表1:幼児教育カリキュラムの目次

章立ては多少異なりますが、内容には共通する点がたくさんあります。大きな違いは、日本の幼児教育では、項目分けしてそれぞれについてきめ細かい教育を行い(小学校入学以降の、科目に分けて行う教育に繋がっている)、スウェーデンでは、多角的・統合的な学びの力をつけることを重視した教育を行っている(学校教育では、プロジェクト学習のような総合的な学習を有効活用している)と言えます。

それぞれの教育に良い点がありますが、日本は幼児教育の段階から細分化と管理をし過ぎて、画一化する傾向があります。また、今OECD(経済協力開発機構)でも、幼児教育で非認知スキル(社会情動スキル)を育むことが重要視されています。日本の幼児教育は非認知スキルの中の「思いやり」「協調性」「忍耐力」などを育むことに適していますが、「独創性」「創造力」「チャレンジする」「勇気」などを育むにはやや物足りないようです。日本人の美点・日本の幼児教育の良さは大切にしながら、将来、国際社会で活躍できる能力の根っこになる力を幼児期に育むことができる幼児教育が必要です。

 

【参考資料】
1) Curriculum for the Preschool, Lpfö18, Skolverket, 2018
2) Skills for Social Progress: The Power of Social and Emotional Skills, OECD, 2015

*注
スウェーデンでは子どもや保護者のニーズに合わせて多様な幼児教育が提供されているが、どれも国定カリキュラム(Lpfö18)に準拠して行われている。日本では、幼稚園、保育所、認定こども園それぞれに幼児教育カリキュラムがある。本稿は幼児‘教育’に重点を置いて論じたので、教育を主目的としている幼稚園のカリキュラムである幼稚園教育要領を比較に用いた。

一覧へ戻る

TOP