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調査研究・コラム

研究データ

〈2019/08/15〉

顧問 渡部かなえ(神奈川大学人間科学部教授)

【神奈川大学産官学連携研究事業】第15回 保育所の面積基準の国際比較

子ども達が元気にのびのび育つには十分な広さが必要です。認可保育所では保育室や屋外遊技場(園庭など)の広さが設置基準で定められていますが、筆者が調査で訪れた海外の保育施設と比べると、日本の保育所は狭く感じられます。全国社会福祉協議会が海外の保育施設の子ども1名あたりの面積(職員室や事務室、調理室やトイレ、廊下や階段、倉庫などを除く)を調査しているので(資料1)、2歳以上の子ども一人あたりの保育室の面積の基準を日本(資料2)と比較してみたのが以下の表です。なお、アメリカ、フランス、ドイツは全国基準がなく地方自治体によって異なるので、標準的な州・市の基準をとりあげています。

 

資料1

 

スウェーデンの保育室に義務付けられている広さは群を抜いていますが、上表で基準面積が最も狭いイギリスでもほとんどの保育所は3.33m2くらいを確保しています。日本の2m2に満たない基準面積はかなり狭く、加えて今は待機児童解消に向けた緊急対策として定員超過が認められているので、定員を超える園児を受け入れている保育所では、園内がもっと混雑しています。

 

▲資料2

 

屋外遊戯場(園庭)に関しても、日本は他国の半分以下の広さでよいことになっています。イギリスやスウェーデンでは面積の基準はありませんが、どこの保育施設にも広い園庭があり、子ども達が元気に遊びまわっています。またスウェーデンやドイツには園庭が森につながっていたり、森で保育を行っている森の保育園もあり、広大な自然の中で子ども達は遊びを通してさまざまな体験をしています。
なお日本の設置基準では、付近に公園などがある場合は園庭がなくてもよいとされています。園庭のない園が複数あるエリアでは、公園に行ったら別の園の子ども達が来ていて、一人あたりにするとかなり狭いスペースで遊ぶか、空いている公園を探して道路を歩いて移動するという状況が発生しています。

 

保育の質を保つには、子ども達が元気にのびのびと遊べる広い場所が不可欠です。保育士も保育所も子ども達の健やかな育ちのために最大限の努力をしていますが、行政、近隣の学校、地域住民などの保育へのさらなる理解と支援、協力が必要です。
神奈川大学では、産官学連携研究事業として民間の認可保育所(スターチャイルド白楽ナーサリー)の子ども達と大学生が、月1回程度、大学のグラウンドで運動遊びを行っています。大学のグラウンドや体育館も、現状では、体育の授業や課外活動でほぼ空きがなく、教育研究活動として、この程度の頻度で行うのが精一杯なのですが、今後、運動施設の改修・拡充が実現できたら、ぜひ、コミュニテイのみなさまの健康づくりや子ども達が元気いっぱい遊んで健やかに育つ場としても活用できるようにしていきたいと考えています。

 

【資料】
1) 社会福祉法人 全国社会福祉協議会, 機能面に着目した保育所の環境・空間に係る研究事業 総合報告書, 第2章, 2009.
2) 厚生労働省, 保育所の設備及び運営に関する基準の条例制定状況及び運用状況等(都道府県),
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku//201512jyoureitou_1.pdf

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